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会社法による資本の概念と税務

 尊敬する山本守之先生の書籍からの引用です。

1.資本の概念

 法人税法では、「資本等取引」は所得金額の計算に影響を与えない取引と規定しています。この場合の「資本等取引」とは次のものです。

①法人の資本金等の額の増加または減少を生ずる取引

②法人が行なう利益または剰余金の分配(資産の流動化に関する法律第115条第1項《中間配当》に規定する金銭の分配を含む)

③残余財産の分配または引渡し、また、「資本金等の額」は株主から出資を受けた金額であり、利益積立金額とは所得金額で留保している金額です。税務の貸借対照表を示すと次のようになります。

  資本金等の額は、次の算式で表示できます。

  資本金等の額=資本金の額十 (資本金の額以外の増減額:前期まで+当期)

  資本金等の額とは、資本金の額または出資金の額と、資本積立金額との合計額をいいます。

2.配当の財源

 かつて、わが国の商法では「資本維持の原則」から、株主への配当は利益から行なうものとし、資本や資本準備金が配当の原資となることは想定していませんでしたが、平成13年からこの考え方が変わりました。

 この改正は、商法理論というよりも、改正の要請が強く反映したようです。

 この時期は、日本経済がバブル後の負の通産に悩んでおり、不良債権を抱える金融機関に公的資金の導入という経済措置が行なわれましたが、具体的には優先株という形で資金を入れました。

 優先株は配当が払われなければなりませんが、営業状態がよくないと配当資金に困ります。

 そこで、配当可能利益のルールを変えることになったのです。

 当時の企業はかなり多額の資本準備金を持っていました。

 それはバブル期に時価発行増資(エクイテイファイナンス)を行ないましたが、当時の商法では、払込み金額の2分の1は資本に、残りの2分の1 (未満)は資本準備金としてリザーブできました。

 これを配当に回せればということで商法改正が行なわれたのです。

 改正前の商法では、法定準備金は欠損の補填と資本の増加にしか充てられませんでしたが、平成13年の商法改正で減資差益を法定準備金制限の緩和でその他の資本剰余金ができて、そこに資金を移し、利益配当に回すことができるようにしました。

 また会社法では、「利益の配当」から「剰余金の配当」に改められました。

 つまり、企業にプールしているもののうち利益と資本のプールがありますが、見えない容器に入れられており、この容器からあふれ出たものを剰余とする考え方です。

 ここでは、利益の配当、中間配当、資本金および準備金の減少に伴う払戻し、自己株式の買受けなどがなぜ「分配可能な剰余金」となるのかではなく、株主に対して分配可能なものが、「剰余金」として括られているからでしょう。

 この点について、日本経団連の阿部泰久氏は、「もともと、会社は株主(出資者)のものであって、株式会社の財産のうち、償権者保護のために引き当てられなければならないものを除けば、残りはすべて会社の持ち主である株主のものという考え方でしょう。そうであれば、それらを会社にとどめておくべきか、それぞれの持分に応じて引き出すべきかは、株主総会等で示された株主の意志に基づけばよいとの考え方が会社法の底にある」と発言しています。

 こうなると、資本準備金と、会社の稼得した利益に由来する利益準備金とに分ける必要性もなくなるという考え方もできます。

 しかし、会社法では株主に対する利益の配当、資本の払戻し等は、「剰余金の配当」として一本化しましたが、税法では剰余金の配当原資の区分に応じ、配当と資本の払戻しに区分することになります(法法23・24)。

3.剰余金のプレミアム

 株式プレミアムが利益なのかそれとも資本なのかという論争は大正時代に行なわれました。

 この点について当時の東京高等商業学校教授の上田貞次郎氏は、その著書「株式会社経済論」で、これは利益であるという行政裁判所の判決に対して、「額面以上の株式発行に依りて生じたる差額は其の会社創設当時にあると増資の場合にあるとを問わず、明白に株主の出資にして会社の利益にあらず。

 会社は本来株主が営利の為めに起したるは企業の一形式に過ぎずして株主の払込むものは其の名称の如何を問わず悉く出資なり。

 企業の利益は此の出資を運用して然る後に始めて生ずるものなり」としています。

 ここでは、株式プレミアムの利益説に対して、当時の資本概念から株式プレミアムの資本説を展開したのです。

 この後に2つの考え方は激しい論争になりました。

 ただ、これを課税理論(法人を通じてその資本主に課税する)からすれば、プレミアムを財源とするものに対して税を課すことができるかという問題に発展します。

 ところで、会社計算規則(平成18年2月交付)第108条では、株式会社の貸借対照表は、株主資本、評価・換算差額等、新株予約権に区分し、株主資本は、資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金(資本準備金、その他資本剰余金に区分)、利益剰余金(利益準備金、その他利益剰余金に区分)、自己株式、自己株式申込証拠金に区分し、その他の資本剰余金およびその他の利益剰余金は適当な名称を付した項目に細分することが可能です。

 株主資本は、自己株式を除き、払込擬本(資本金、新株式申込証拠金、擬本剰余金、自己株式申込証拠金)と留保利益(利益剰余金)からなりますが、これらの中心をなすのは、 資本金、資本剰余金および利益剰余金です。

 払込資本の維持に関しては、配当規制の基礎となる会社法446条(剰余金の額)および 453条(剰余金の配当)がありますが、その枠内で分配可能額の縛りがあります。

 ここでは、株式会社はその株主に対して剰余金の配当をすることができ(453条)、期末の剰余金 の額はその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額です。

 剰余金の計算の前提にある資本準備金には、すでに述べたとおり減資差益および自己株式処分差益は含まれません。

 わが国税法では、法人税は株主に対する所得税の前取りであると説明されていました。その論拠は次のようなものです。

①法人企業の生活活動が拡大し、独立してその活動の成果を得たとしてもその成果(利益)は結局個人株主に帰属する。

②個人企業が大規模となってその所得が個人企業主に属し、個人の財産を形成することと本質的には変わるところはない。

③法人は個人が富を追求する法律的な手段に過ぎないので、真の担税力はその富の帰属する個人にある。

④法人所得に課税するとしても、それは結果として富を享受する資本主たる個人に対する所得税の前取りに過ぎない。とくに、会社法における資本概念ですが「法人は株主のものである」(アメリカ商法の考え方)を主体とすれば、この考え方は説得力を持つかもしれません。

 わが国における現在の法人税制も、法人税を所得税の前取りとする考え方に近いのですが、社会構造や経済的影響を配慮しながら組み立てられたものです。

<課税理論の変化>

(1)法人擬制説の考え方

 税制調査会が法人擬制説によっていることを明確に打ち出したのは「現行のわが国の法人税制は、昭和25年のシャウプ勧告に基づく税制改正以来、法人は株主の集合体であるという考え方から、法人税はその負担が最終的に株主に帰属するという意味で、個人株主の所得税の前取りと観念する立場で構成されている」「今後におけるわが国の社会、経済の進展に即応する基本的な租税制度のあり方」についての答申」(税制調査会、昭和39年12 月)という税制調査会の答申です。

 同じように「現行のわが国の法人税制は、昭和25年のシヤウプ勧告に基づく税制改正以来法人を株主の集合体とみて、法人税を個人株主の所得税の前払いと観念する立場で構成されており、このような考え方に基づき、法人の支払う配当については、受取株主の段階で個人株主には配当控除、法人株主には受取配当益金不算入を認めることにより課税の調整を行なうたてまえをとっている」(「長期税制のあり方についての中期答申」税制調査会、 昭和40年12月)と述べたものもあります。

 これらについては立法当局の国会答弁でも同じで、「現行税制は法人税を個人株主所得 税の前払いである」(水田三喜男大蔵相、昭和42年衆議院)としたり、「現行の税制は株主所得税の前払い」(塩崎潤主税局長、昭和42年大蔵委員会答弁)としていました。

(2)法人擬制説と実在説

法人税の性格については次の3つに区分されます。

①法人を独立した課税主体とする考え方

②法人税を所得税の前取りとする考え方

③法人税を独立した価値のある租税とする考え方

 ①は、法人と個人は独立した経済実体として把握するので、法人所得を課税客体として法人税を、個人所得を課税客体として所得税を課税し、その間には二重課税は存在しないという考え方です。

 この考え方を整理してみると次のようになります。

① 法人は自然人と同じように独立した企業実体をもっており、その経済活動の成果として法人自体の所得が構成されるので、そこに課税すべきである。

② 法人は個人と同じように法人自体に支払能力を有するものであるから、国家社会に対する費用を負担すべきである。

③ 法人は株主だけを主体とするものではなく、償権者、使用人、顧客等を含めた企業に対して利害関係を有する者をすべて包含する実体であると考え、この実体たる法人に対する政府のサービスに対して税を支払うべきである。

 この考え方の根拠を「法人は法の擬制したものではなく、自然人のほかに実在する法的主体たる実体を備えた団体である」というギールケの唱えた法人実在説によるものとして説明されることがありますが、これは適切ではありません。

 租税政策のひとつとして置かれる法人税制が私法の学説によって左右されるべきではないからです。

 ②は、法人自体を担税力の主体とせずに、法人は個人の集合体に過ぎず、法人の所得は配当等という形でいずれ資本主に分配されるのであるから、法人所得に対する課税は資本主たる個人の所得税の前取りとして認識するという考え方があります。

 この考え方は次のような論拠によるものでしょう。

イ 法人企業の生産活動が拡大し、独立してその活動の成果を得たとしてもその成果(利益)は結局個人株主に帰属する。

ロ 個人企業が大規模となってその所得が個人企業主に属し、個人の財産を形成することと本質的に変わるところはない。

ハ 法人は個人が富を追及する法律的な手段に過ぎないので、真の担税力はその富の帰属する個人にある。

ニ 法人所得に課税するとしても、それは結果として富を享受する資本主たる個人に対する所得税の前取りに過ぎない。

 この考え方を「本来の法的主体は自然人のみであり、法人は法が擬制して認められる人格者に過ぎない」というザビニーの提唱した法人擬制説に求めることがありますが、法人実在説の場合と同様に、租税法の分野に法人の法律的性格に関する私法上の議論を持ち込むのは適切なものとはいえません。

 ③は、法人税を個人所得税の果たし得ない独立の価値ある租税とする考え方で、アメリカのリチャード・グードの主張するものです。この考え方では、法人税は、所得と富の集中の最も大きな要素をなしている配当と株式所有の根源である会社利潤を削減することによって分配の平等に貢献するという課税効果をもっており、累進税率を持つ個人所得税ほど完壁な税ではないとしても、消費税や公債等の歳入調達手段に比べれば、現実に即した次善の税であるとするのです。

 つまり、法人税の他の税にみられない価値を投資と消費、雇用と国民所得に及ぼす経済的効果に見出すという立場です。

(3)法人擬制説への疑問

 税制調査会では、「シヤウプ勧告によるいわゆる法人擬制説を基礎とし、個人については配当控除、法人については配当益金不算入の措置を講じて、同一の所得に対して二重に課税されないような建前をとっているが、現実の法人の機能、株式投資の実態等からみると、この課税方式には疑問を持たざるをえない。

 ことに、シヤウプ勧告は、株式の譲渡所得の完全課税を前提として法人擬制説を組み立てているのですが、現在では、既にこの前提がくずれていますから、税制として今後再検討の余地がある」(「最近の諸情勢に即応すべき税制改正について」臨時税制調査会、昭和41年12月)として法人擬制説に疑問を呈しています。

 政府委員答弁では、塩崎主税局長はシャウプ勧告を受けた法人税法改正は「法人擬制説的法人税の効果や仕組み等については、殆ど議論もせず、日本政府は、法人税制についてはシャウプ勧告をそのまま丸呑み」したことが原因としています。

 吉国二郎氏も大蔵省主税局のなかに「(法人)実在説的な考え方から、法人課税の当初から法人独立主体課税説という考え方かが根強く存在し、それがだんだん出てきて、受取配当に始めは課税していなかったのが、やがて60パーセント課税し、1940年改正では結局全額課税して、法人・個人は別々に独立して両方課税するということになった」と語っています。

 このような考え方が、まず、「株主である個人を離れて法人に独自の負担を求めないという考え方に対しては、一方において法人の現実の経済活動を考えた場合大法人と中小法人との間の実態的な経済上の格差が存することが常に意識されるとともに、大法人では一般株主は企業とは法律的にはともかく経済的には全く別個の存在になっているので、むしろ法人の実態的活動に着目して株主とは別個に法人独自の負担を求めることが社会経済の実態に合致するのではないかという考え方があり、従来種々の角度から検討が加えられてきており<中略>」(「長期税制のあり方についての中間答申」税制調査会、昭和41年12月)としていましたが、議論が法人税をあまりに観念的にとらえていたという反省に立って、「これまでの混乱の原因が法人税をあまりに観念的にとらえすぎる傾向があったことにかえりみ、むしろ法人税を企業独自の負担と考えるような社会的意識や税制の歩みを端的に認めつつ検討を加えることが望ましい」(税制調査会、昭和41年12月)として、法人擬制説の単純な考え方に問題があるとしています。

(4)擬制脱、実在説の否定

 これらの反省の結果を示したのが昭和55年11月の「財政体質を改善するための税制上とるべき方策についての答申」であり、次のように述べています。

 「法人の性格論(法人実在説あるいは法人擬制説)については、法人は株主から独立して経済活動を行なう一方、その所得は配当および残余財産の分配により株主に帰属する面があり、また、これが法人という企業形態の存立目的であることも否定しがたく、法人実在説あるいは法人擬制説という形でどちらかの立場に割り切ることは困難であると考えられます。

 したがって、法人の性格論から法人税の負担調整に関する仕組みのあり方を導き出そう とすることは、不毛でもあり、適当でもない」 (昭和55年11月「財政体質を改善するため の税制上とるべき方策についての答申」) としています。

 かつてバブル時代に多くの企業が株主の時価発行(エクイテイファイナンス)を行ない、巨額の払込金を手にしたときに、「これらに法人税を課すべきだという主張に対して、払込金は資本金または資本準備金となっており、配当の財源とはなり得ないから、法人税を課すべきではない」というのが課税当局の主張でした。

 しかし、平成13年の商法改正で「その他の資本剰余金」という科目ができて、配当に回すことができるようになりました。

 つまり、株式の時価による払込金は2分の1未満は資本準備金とすることができたのです。

 これは資本であって配当財源にはならないという理由で、法人税の課税はできませんでした。

 これが「その他の資本剰余金」として配当財源となっても、法人税の課税問題が生じないのはどうしてでしょうか。

 かつては、資本剰余金に利益剰余金は混同してはならないとされていましたが、会社法によって資本剰余金と利益剰余金を合わせて「剰余金の配当」という形で株主に資産が交付されていますが、これによって法人税の課税の根拠を問い直さなくてよいのでしょうか。

 現行法人税法においては、受取配当等の益金不算入の規定上、利益の配当の原資が資本準備金であるか、当期の利益や利益準備金であるかによって取扱いを区分しておらず、また、資本準備金の取崩しによる配当があった場合に有価証券の1株単位当たりの帳簿価額 の調整を行なうといった規定も設けられていません。

 このことから、資本準備金を原資とした配当であっても、税務上は利益の配当として取り扱われ、当然、受取配当等の益金不算入制度の適用対象となるとしているのです。

(5) 負担調整と法人税の性格

 平成12年7月の中期答申においては、法人税・所得税の負担調整に関する基本的仕組みについて次のように述べています。 

 個人と法人をめぐる法人税の基本的仕組みについては、法人の性格をどのように考えるかによって、考え方が分かれてきました。

 すなわち、法人は株主とは独立した存在であると見る法人実在説の立場からは、法人税は法人独自の負担であり、配当に対する法人税と所得税の税負担の調整を行うことは不要であるとの主張がなされてきました。

 一方、法人は個人(株主)の集合体であるとの法人擬制説の立場からは、法人税は所得税の前取りであり、配当に対する法人税と所得税の税負担の調整を行うべきであるとの主張がなされてきました。

 法人の活動の社会的実態を見ると、法人は株主と別個の独立した主体として経済活動を営み、成果をあげていることは事実です。

 しかしながら、同時に、法人の経済活動によって得られる所得が配当の形で株主に帰属するという側面があり、また、これが法人という企業形態の存立目的であることも否定することはできませ ん。

 このような二面的な性格を有する法人について、法人実在説あるいは法人擬制説という形で一面的に割り切ることは困難と考えられます。 

このような問題点の指摘に対して、大学の税務会計の教授が、いまだに「法人実在説と 法人擬制説」という単純な理解で講義を進めているのは悲しい限りです。

 このような状況であるので、税調では、受取配当等益金不算入の規定(税負担の調整) を置く理解を次のとおりとしています。 

①配当を支払う法人の法人税と配当を受け取る法人の法人税との間の税負担の調 整については、これを行わないとすれば、配当原資が次第にやせ細り、配当の受 取り経路によって個人株主の税負担が異なることになること

②親子会社間の配当については税負担の調整を行わないとすれば、支店形態を選択して事業を営む場合に比べ、子会社形態を選択して事業を営むことが税制上不利になること

 以上述べたような経過をたどっていますが、心配なのは大学の税務会計の教授等のなかには、いまでも法人擬制説、実在説から抜けきらず、法人税法を法人税の性格から教えているものが少なからずあり、このような単純な議論には心を痛めています。

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